ハングリースピリットの娘へ、母の言葉

2015年4月22日 水曜日
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ふと立ち寄った本屋の白い棚に、誰かが置き忘れたオレンジ色の本が一冊。その本を見つけ、本に飛びついた須賀明美さん。表紙に描かれたタイトルは、人生を変えるほどのフルマラソンの魅力を伝える内容だった。

自分を変えるきっかけを探していた明美さんには、難病の甥っ子がいる。甥っ子を応援したい。また、将来についてアドバイスの多い両親に、自立していることを証明したい。そして、厳しくも親しみのある上司に認めてもらいたい。出会った本から、マラソンを通じてその思いを伝えたいと思った。

明美さんはマラソンデビューを決めた。『第14回坊っちゃんランランラン』ラン・RUNの部(ハーフ・制限なし)だ。

「運動経験はゼロでしたが、ダイエットや美容にもいいということで自然とガンバレました。」

 

9月1日から、明美さんは一念発起。12月開催の大会まで3ヶ月。ウォーキングをすることから練習を頑張った。普段は厳格な父の博史さんが日課にしているウォーキングに、明美さんは付き合う。

「一緒に歩いて、コミュニケーションを密にとれたことが嬉しかったですね。」

そのまま、週5回の割合でランの練習を続ける。しかし、どうしても連続15kmほどが限界。そして、この状態で大会当日をむかえる。

 

「一番後になって誰もいなかったら、お母さんは恥かしいから帰るよ。」

応援に来てくれた母の静子さんは、会場でそう明美さんに言った。

明美さんは少し不安なまま、しかし思い切りスタートする。

「初めてなので、最初から飛ばしてしまったんです。」

それでも、10kmまでノンウォーク。一旦、歩いてしまうと、ずしりと身体に感じる重み。10km以降はしばらく歩いたり走ったりを繰り返す。

 

明美さんがゴール手前にさしかかると、他の誰よりもの大きな声援が明美さんの耳に入った。

「思ったよりも早かったねぇ。頑張って頑張って!」

手をたたきながらそう言っている人がいる。

母、静子さんだった。

「一番後になって誰もいなかったら、お母さんは恥かしいから帰るよ。」という、母、静子さんの言葉は、幼い頃から愛情を持って厳しく育てた娘、明美さんがハングリースピリットを持っていることを知っていた、愛のムチだった。

「私、苦境に立たされると、より頑張ろうと思うんですよ。」

明美さんは笑いながら言う。

 

人生初のマラソンのゴールゲートを明美さんはくぐった。

ゴールタイムは3時間に近いが、

「母の声援がとてもうれしく、走ってよかったという気持ちになりました。大会の雰囲気って不思議ですね。走れちゃいました。また、両親や、今は退院して回復に向かっている甥っ子、会社の上司に感謝しています。」

 

ランはすっかり明美さんのライフスタイルの一部に。5月に開催される『第24回朝霧湖マラソン大会』のハーフマラソンに向けて、現在、目標タイムを決め練習している。

「2月に高知龍馬マラソンでフルに出場しゴール出来なかったので、今度はゴールを目指して頑張ります。」

胸を張る明美さんの瞳が輝く。

 

(文責:石渡 素子)

 

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