がむしゃらに、ただがむしゃらに

2015年5月27日 水曜日
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市民球場近くのコンクリート壁に向かってボールを投げ、三浦学(まなぶ)さんはひとり野球の練習をしていた。ひと汗流して近くのスポーツ施設に入ってみると、様々なパンフレットが目に飛び込んできた。その中に『第2回ええじゃないか豊橋サイクルフェスティバル』の告知も入っていた。

「ロードバイクは一度も乗ったことがなかったのですが、無性にやってみたいと思ったんですよね」

 出場したいと思ったら行動あるのみ。すぐに申し込んだ。1月中旬のことである。

大会に出ることは決まった。しかしロードバイクがない。弟に借りるつもりでいたが、その弟も同じ大会に参加するという。大会は3月1日。すぐにでも練習もしないといけないのに何もできない。購入するという手もあったが、このレースのために10万円近く出す決断はできなかった。結局、貸してくれるところを探し回り、やっとそういう自転車屋さんを見つけることができた。2週間前の話しだ。当然ながら、少し練習をするだけであっとう間に本番を迎えることとなってしまった。

 

「目標は優勝です。やるからにはそこを目指さないと。友達や会社の同僚にも、1位を獲ると宣言しました」

 三浦さんは自らプレッシャーをかけて奮起するタイプなのだ。

大会当日は雨だった。ビギナークラスにエントリーした81人中、なんと31人が不参加するほどの悪天候だった。

「最初から全力でこぐ。戦術があるとしたらそれだけなので、自分の中では雨は関係ありませんでした」

 そう話すとおり、スタートから先頭集団の中に混じって、一生懸命にペダルをこいだ。地面が濡れていると滑りやすい。それを示すとおり、1周2kmのレース場で、2周目に入ったときにアクシデントが起きた。

「僕の後ろでガシャンという音がしたんです。振り返ることはしませんでしたが、スリップで転倒したことがはっきりと分かりました」

 斜めに降り注ぐ雨が冷たく顔に当たる。視界も悪い。自分が今、何番目を走っているのかすら把握できなかった。ただ目の前にある道を行くのみだった。三浦さんはむしゃらにロードバイクをこいだ。

 

がむしゃらになるには理由があった。それは、なぜロードバイクレース出場を思い立ったのかにまでつながることだった。

「職場に好きな人がいて、アピールしたかったんです。だから申し込んだんです」

無性にやってみたいと語ったのは、そういうことだったのだ。実は三浦さんは3月いっぱいで退社が決まっていた。その前に思いを伝えたかった。ロードバイクレースに優勝して、振り向かせたかった。

しかし、この恋は成就しなかった。

「自分の中に熱い気持ちがあると分かっただけでも良かったと思います。好きな思いがなければレースに参加することもなかったし、今の自分も存在しないわけですから」

 

 順位は14位だった。1位を狙ってのこの結果は物足りないと思われるかもしれないが、優勝者とは3分しか違わない。

「これは本当に自信になりましたね」

 大会後、三浦さんはロードバイクを購入した。今後も続けていき、いろいろなレースに出場したいという。そして来年、もう一度『ええじゃないか豊橋サイクルフェスティバル』に出て、今度こそ優勝を目指す!

 

(文責:ライター金子塾 滝沢)

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